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2009/12/15

冬樹

 ついこの間まで地球温暖化のせいで温かいな、と思っていたが、昨日あたりから急に冷え込んできた。明け方の冷え込みは氷点下6度、日中でも気温が氷点下のまま、毎日散策するスヘベニンゲンの森は、すっかり葉を落としてしまったブナや樫の木が、樹氷で美しい。
 しかも、緯度の高いオランダは、昼間の太陽でも、30度くらいの斜角にしか上がらない。晴れてさえいれば、人の肌を思わせるようなすべすべと美しいブナの木肌に、南の方からの斜陽が長く続き、得も言われぬ美しさだ。

 冬の立ち木は、まるで、無駄という無駄をすっかり捨て去って裸になって立っている人のようでもある。

 そして、その枝ぶりは、一つ一つが天に向かって力の限り伸びながら、何の飾り気もない、自分の力だけで立っているように見え、そのキリリとした凛々しさが美しい。

 人も、世も、時々こうして無駄をなくし、しんしんと冷える厳しさの中に立ってみることが必要なのかもしれない、とふと思う。そして、素裸の自分を知ることは、同時に、未来への出発点を知ることであるのかもしれない、と。

 寒風は、温かさというものに気づかせてくれる。